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徳島地方裁判所 昭和51年(行ウ)7号 判決

徳島市川内町平石若宮一四一番

原告

広瀬忠作

徳島市幸町三丁目五四番地

被告

徳島税務署長

右指定代理人

山浦征雄

右同

大川毅

右同

徳永孝雄

右同

加地淳二

右同

安西光男

右同

西原忠信

右同

村上真三実

右同

小坂守

右同

河野時造

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一、原告

1. 被告が原告に対し昭和五〇年九月三〇日付で昭和四九年分長期譲渡所得についてなした更正処分九八二万〇、六八〇円のうち所得額六七三万〇、六八〇円を超過する部分及び重加算税賦課処分を取消す。

2. 訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告

主文と同旨

第二、当事者の主張

一、請求原因

1. 原告は被告に対して、昭和五〇年三月一四日、昭和四九年分所得税について別紙のA欄記載のとおり確定申告した。

2. 被告は原告に対し、昭和五〇年九月三〇日付で別紙B欄記載のとおり更正処分及び重加算税の賦課決定処分をした。

3. 原告は右処分について昭和五〇年一一月二七日被告に対し異議申立をしたが、被告は昭和五一年二月一八日これを棄却したので、原告は同年三月一七日国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は同年九月三〇日これを棄却した。

4. しかしながら原告の昭和四九年分所得税は別紙A欄記載のとおりである。

5. よつて本件更正処分のうち別紙A欄を超過する部分起び重加算税の賦課決定処分は違法であるからその取消を求める。

二、請求原因に対する認否

1. 請求原因1ないし3の各事実は認める。

2. 同4のうち別紙B欄の(1)、(3)ないし(8)の事実は認めるが、(2)、(9)ないし(11)は否認する。

3. 同5は争う。

三、被告の主張

1. 被告が原告に対し昭和五〇年九月三〇日付でなした更正処分における分離課税の長期譲渡所得金額は、九八二万〇、六八〇円であるがその計算根拠は次のとおりである。

(一)  譲渡した資産(本件分離課税の対象資産、以下「本件土地等」という)

〈省略〉

(二)  譲渡先 徳島市川内町富久一九ノ二三木善雄

(三)  譲渡した年月日 昭和四九年二月一八日

(四)  譲渡価額 一、二三六万円

(五)  譲渡に要した費用 三三万九、三二〇円

(六)  譲渡した資産の取得時期 昭和四三年九月三〇日

(七)  〃 取得費 一二〇万円

(八)  長期譲渡所得の特別控除額 一〇〇万円

(九)  分離課税の長期譲渡所得金額 九八二万〇、六八〇円((四)-(五)-(七)-(八))

2. 納税額

原告の農業所得金額は別紙B欄の(1)金七六万五、五五〇円であり、所得から差引かれる金額の合計額である別紙B欄の(8)金一四九万六、六〇〇円より少額であるから、この差額を右の長期譲渡所得金額より差し引き、これに租税特別措置法三一条一項の一〇〇分の二〇の税率を掛けたものが納税額一八一万七、八〇〇円である。

9,820,680-(1,496,600-765,550)=9,089,630(円)

〈省略〉

3. 重加算税賦課処分について

(一)  原告は本件土地等の譲渡価額が一、二三六万円であるにも拘らず、これを九二七万円とする仮装の売買契約書を作成し、真実の譲渡価額を隠ぺいして必要経費等を控除して計算し、長期譲渡所得金額を六七三万〇、六八〇円と被告に申告したものである。

(二)  それゆえ重加算税の額は、真実の譲渡価額を基礎にした原告の納税額(被告の更正処分における納税額)から原告の申告納税額を差し引いた額に法定の税率一〇〇分の三〇を掛けた額である。

〈省略〉

四、被告の主張に対する認否

1については(四)の譲渡価額を否認し、分離課税の長期譲渡所得金額を争いその余は認める。譲渡価額は九二七万円である。

2は認める。

3の(一)のうち長期譲渡所得金額を六七三万〇、六八〇円と申告したことは認め、その余は否認する。譲渡価額は九二七万円である。3の(二)は争う。

第三、証拠

一、原告

1  甲第一、二号証

2  乙第一号証の成立は不知、第二、三号証、第四号証の一ないし三及び第五号証の成立及び原本の存在とも認める。

二、被告

1. 乙第一ないし三号証、第四号証の一ないし三及び第五号証

2. 証人木内雅男

3. 甲第一号証の成立は否認し、第二号証の成立は不知。

三、職権

原告本人

理由

一、請求原因について

請求原因1ないし3項は当事者間に争いがない。

原告は被告のなした更正処分中、別紙A欄を超過する別紙B欄の(2)、(9)、(10)及び(11)の部分、並びに重加算税賦課処分を争う。

二  よつて被告の主張について判断する。

(イ)  主張1項の分離課税の長期譲渡所得金額算出の根拠中分離課税の対象資産が本件土地等であり、その譲渡先、譲渡年月日、譲渡に要した費用、本件土地等の取得費、特別控除額は当時者間に争いがない。

よつて本件土地等の譲渡価額について判断するに、証人木内雅男の証言により真正に成立したと認められる乙第一号証(但し、同証人の証言により買取額一二、三六〇万円の記載は一二、三六〇千円の誤記と認められる。)、原本の存在及びその成立について当時者間に争いのない乙第二、三号証、第四号証の一ないし三、第五号証並びに証人木内雅男の証言、原告本人尋問の結果によれば、原告は、昭和四八年一二月一七日本件土地等を代金一、二三六万円で売却する旨の契約を締結し、同日手付金二〇〇万円を受領し昭和四九年二月一八日残代金一、〇三六万円を受領したことが認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信し難く他に右認定を覆すに足る証拠はない。

そして、右認定事実及び右当時者間に争いのない事実によれば分離課税の長期譲渡所得金額は九八二万〇、六八〇円と認められる。

(ロ)  それゆえ、右分離課税の長期譲渡所得金額九八二万〇、六八〇円と当時者間に争いのない農業所得金額、所得から差引かれる金額を基礎に算出される原告の納税額は主張2項記載の計算から一八一万七、八〇〇円である。

よつて、被告の本件更正処分は適法であり、原告の本件更正処分の取消を求める部分は理由がない。

(ハ)  原告が被告に対して、分離課税される長期譲渡所得金額を六七三万〇、六八〇円と申告したことは当事者間に争いがなく、本件土地等の譲渡価額が一、二三六万円であることは右認定のとおりである。

口頭弁論の全趣旨、その存在について当裁判所に顕著である甲第一号証及び証人木内雅男の証言によれば、原告が買主三木善雄と通謀のうえ本件土地等の譲渡価額が九二七万円である旨の仮装の売買契約書を作成し、真実の譲渡価額を隠ぺいしたことが認められ、原告本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信し難く、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

以上によれば、主張3項の(一)の事実は認められる。

よつて、原告に課される重加算税は主張3項の(二)記載のとおり更正処分の納税額から原告の申告納税額を差引いた額に法定の税率一〇〇分の三〇を掛けた一八万五、四〇〇円である。

それゆえ、被告のなした重加算税賦課決定処分は適法であり、この取消を求める原告の請求は理由がない。

三、以上により、原告の本訴請求は全部理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩佐善巳 裁判官 安広文夫 裁判官 新井慶有)

別紙

〈省略〉

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